
車の撮影で基本となるカメラ設定は、車の前から後ろまでピントを合わせるためのf/8前後の中間的な絞り、ブレを防げるだけ速いシャッタースピード(手持ちなら1/125秒以上)、そして光の量が許す範囲で最も低いISO感度です。販売店の展示場ではこれらを手動で設定し、ホワイトバランスも固定しましょう。カットごとに色味が変わらず、掲載するどの車も統一感のある仕上がりになります。
販売店の展示場でカメラ設定を正しく決められるかどうかで、1回で撮り終えられるか、何時間もの手直しが発生するかが分かれます。スタジオのカメラマンはあらゆる条件をコントロールできますが、展示場で撮影するスタッフはそうはいきません。相手にするのは、その日の空模様、路面の照り返し、そして次の車を掲載するまでに残された時間です。
このガイドでは、スマホと専用カメラそれぞれの具体的な設定を、展示場で実際に直面する条件ごとにまとめました。各セクションには、コピーして印刷し、ダッシュボードに貼っておける早見表を載せています。撮影後の工程は、Car Background AIの車向けAI写真編集ツールなどで照明や背景の問題を補正できます。ただし、ぼやけた写真や露出が大きく外れた元写真は、どんなAIでも元には戻せません。
スタジオでは照明が固定されているため、露出、ホワイトバランス、色温度はどのカットでも変わりません。一方、展示場では一日を通して条件が変わります。朝の曇り空なら柔らかく均一な光ですが、日中の太陽はバンパーの下やホイールハウスに強い影をつくります。夕方になると暖色の色かぶりが出て、長く伸びた影で車のプロポーションがゆがんで見えます。
複数のスタッフが初期設定のオートのまま撮影すると、スマホやカメラごとに露出とホワイトバランスの判断が異なります。その結果、在庫一覧に並ぶ車が、まるでそれぞれ別の世界で撮られたように見えてしまいます。設定を統一すれば、編集を始める前の段階で、このばらつきを根本からなくせます。
最近のスマホは、正しく設定すれば中古車情報サイトの掲載用として申し分ない写真が撮れます。ポイントは、仕上がりのばらつきの原因になる機能をオフにすることです。
「設定」アプリの「カメラ」を開き、撮影を始める前に次のように設定しておきます。
撮影時は車のボディを長押しして、ピントと露出を固定します(画面上部に「AE/AFロック」と表示されます)。これで、カットごとにカメラが測光し直すのを防げます。さらに太陽アイコンを少し下にドラッグして、露出を約半段下げましょう。自動露出では白飛びしがちな明るい塗装やクロームのディテールを残せます。
Androidのフラッグシップモデル(Samsung Galaxy、Google Pixel)の多くは、カメラアプリにプロモードやマニュアルモードがあります。このモードに切り替えて、次のように設定します。
カメラは車のベルトライン(窓の下端)の高さに構えます。12カットの構図テンプレートについては、車の写真の構図ガイドで詳しく解説しています。カメラの位置はおおよそ腰の高さが目安です。胸や目の高さから撮ると見下ろすアングルになり、車が小さく見えて印象が悪くなります。
専用カメラを使っている販売店なら、次の基本設定で展示場のほとんどの条件に対応できます。まずはこの設定から始めて、必要に応じて調整してください。
設定項目 | 晴天 | 曇り | 日陰・屋根付き展示場 |
|---|---|---|---|
絞り | f/8 | f/5.6〜f/8 | f/5.6 |
シャッタースピード | 1/250〜1/500 | 1/125〜1/250 | 1/60〜1/125 |
ISO感度 | 100 | 200〜400 | 400〜800 |
ホワイトバランス | 太陽光(5200K) | 曇天(6000K) | 日陰(7000K) |
フォーカスモード | 1点AF | 1点AF | 1点AF |
測光モード | 評価測光(マルチパターン測光) | 評価測光(マルチパターン測光) | 評価測光(マルチパターン測光) |
ファイル形式 | JPEG(ファイン)、手動で編集するならRAW | JPEG(ファイン) | JPEG(ファイン) |
絞りはf/8がちょうどよいバランスです。回折によるにじみ(小絞りボケ)を抑えつつ、車全体にくっきりとピントが合います。f/2.8〜f/4のように絞りを開けると背景はきれいにボケますが、車の後ろ側が甘くなりやすく、中古車情報サイトの掲載写真ではピント合わせの失敗に見えてしまいます。逆にf/11以上まで絞ると回折の影響が出るうえ、背景のボケが関係ない展示場では絞る意味もありません。
展示場での撮影で一番の難題は、日中の太陽がバンパーの下やホイールハウス、サイドパネルに落とす濃い影です。太陽が撮影者の背後のやや斜めに来るよう車を配置すると(「レンブラント」アングル)、コントラストを抑えられます。車を動かせない場合は影の部分に露出を合わせ、ハイライトが多少飛ぶのは許容しましょう。AIの後処理では、つぶれた影を持ち上げるより、白飛びした部分を戻すほうが簡単です。
曇りの日は、展示場での撮影に理想的です。拡散した光で強い影が消え、車全体の露出が均一になります。必要な調整は、露出補正を少しだけ上げる(+0.3〜+0.7EV)ことだけです。こうすれば、グレーの空に露出計がだまされて車が暗く写るのを防げます。
濡れた路面の映り込みは、意図してうまく使えば写真を引き立ててくれます。カメラはレインカバーか、レンズ用の穴を開けたビニール袋で保護しましょう。少し低いアングルから撮ると、つやのある路面の映り込みを写し込めます。暗さを補うためにISO感度を1段上げ、ごちゃごちゃした背景が映る水たまりに向けて撮るのは避けます。
屋根付きの展示場や屋内のショールームでは、天井の蛍光灯と、開いた側面から入る自然光が混ざることがよくあります。色温度が混在するため、白い車が緑や黄色っぽく写ってしまいます。この光の下で白またはグレーのカードを撮影し、カスタムホワイトバランスで手動設定しましょう。スマホがカスタムホワイトバランスに対応していない場合は、「蛍光灯」プリセットを出発点にします。
販売店の撮影で技術的に最も難しいのが車内です。車内は外の日差しに比べて暗いため、窓が写り込むと明暗差が極端に大きくなります。さらに、ダッシュボードやハンドル、インフォテインメント画面への映り込みも厄介です。
スマホの場合は運転席のドアを全開にし、Bピラーの位置からやや内側に向けて撮影します。センターコンソールをタップしてピントを合わせ、露出を固定しましょう。ドアを開けておくと、窓越しに撮るより周囲の光が均一に車内に回ります。
一眼レフやミラーレスでは、車内の暗さと色温度の混在に対応するため、次のように調整します。
撮影後に暗い車内を補正する具体的な方法は、AIによる照明の最適化ガイドをご覧ください。
この表を印刷して、撮影機材と一緒に置いておきましょう。展示場で出くわす条件の90%は、これで対応できます。
シーン | スマホの設定 | カメラの設定 | ポイント |
|---|---|---|---|
外装(晴天) | ボディで露出を固定し、0.5段下げる | f/8、1/250〜1/500、ISO 100 | 太陽に向かって撮らない |
外装(曇り) | 露出を固定し、0.3段上げる | f/5.6〜f/8、1/125、ISO 200 | 撮影に最も適した光 |
屋根付き展示場 | WBを手動で:蛍光灯またはカスタム | f/5.6、1/60、ISO 400〜800、カスタムWB | 緑かぶりに注意 |
外装(雨) | 露出を固定し、0.7段上げる | f/5.6、1/125、ISO 400 | カメラを保護し、映り込みを生かす |
車内(ダッシュボード・シート) | ドアを全開にし、コンソールで露出を固定 | f/4〜f/5.6、ISO 800〜1600、オートWB | Bピラーの位置から撮影 |
ディテール(ホイール・エンブレム) | ディテールをタップしてピントを合わせ、近づいて撮影 | f/5.6、ディテールに1点AF | 画面いっぱいに写し、ズームは使わない |
後処理の限界を知っておけば、撮影時に何を優先すべきかがチームで明確になります。Car Background AIのようなAIツールなら、背景の補正(ごちゃごちゃした背景を消して、すっきりしたシーンに差し替え)、露出や明るさのムラの補正、色の鮮やかさの向上、まとめて撮った写真のホワイトバランスの統一ができます。色味を鮮やかにしすぎずにトーンを整える方法は、車の写真の色補正ガイドで解説しています。
一方、AIでも確実には直せないものがあります。手ブレ、ピントの外れ(ぼやけた車はぼやけたまま)、ハイライトのディテールが完全に失われた極端な白飛び、バンパーやミラーが切れてしまった構図の失敗です。これらは撮り直すしかなく、車の画像をどれだけ高画質化しても、撮影時に写っていなかったディテールは作り出せません。
実践的なルールはシンプルです。ピント、構図、基本的な露出は撮影時に確実に押さえ、残りはAIに任せます。こう分担すれば、展示場のスタッフは完璧な背景やスタジオ並みの照明を気にせず、すばやく撮影できます。どちらもAIなら数秒で処理できるからです。
展示場での車の撮影に最適なカメラ設定とは、チーム全員がいつも守れる設定のことです。早見表を印刷し、撮影する時間帯をそろえ、毎回撮影前に露出を固定しましょう。この3つの習慣で、掲載作業を遅らせる品質の問題の80%はなくなります。残りの20%、つまり背景、明るさの統一、色の一貫性は、Car Background AIが後処理を引き受けるので、チームは撮影のスピードに集中できます。
販売店の展示場で外装を撮るなら、まずはf/8がおすすめです。f/16のような小さな絞りで起こる回折によるにじみを避けつつ、フロントからリアまで車全体にくっきりピントが合います。日陰や屋根の下で光が足りないときはf/5.6まで開けてもかまいませんが、車の後ろ側が十分シャープかどうか確認しましょう。
販売店で大量に撮影するならJPEGが向いています。RAWは編集の自由度が高い反面、ファイルサイズが3〜5倍になり、転送に時間がかかり、1枚ずつ現像する必要があります。JPEGでもAIツールで明るさや色を補正できるため、作業効率を落としてまでRAWの柔軟性を求める場面はほとんどありません。RAWは、手作業でレタッチする広告用のメインカットだけにしておきましょう。
オートホワイトバランスに頼らず、すべての端末で同じプリセットに固定しましょう。屋外の展示場なら「太陽光」(5200K)が最も無難です。これで誰が撮っても、白い車はどの写真でも同じ白に写ります。そのうえで、撮った写真をまとめて同じ後処理にかければ、残った色のずれもそろえられます。
濃い色の車は光を吸収するため、カメラが周囲を露出オーバーにしてしまいます。背景を白飛びさせずにボディを明るく写すには、露出補正を+0.3〜+0.7EV上げます。スマホなら最も暗いパネルで露出を固定し、露出スライダーを少し上げます。一眼レフでは、画面全体を平均する評価測光ではなく、車に合わせたスポット測光を使いましょう。
使えます。最近のフラッグシップモデル(iPhone 13以降、Samsung Galaxy S22以降、Google Pixel 7以降)なら、中古車情報サイトの掲載に十分な解像度とダイナミックレンジがあります。大切なのは、オートモードに頼らず手動で設定することです。露出とホワイトバランスを固定し、AIのシーン認識をオフにして、1xで撮影しましょう。Car Background AIのようなツールでAIの後処理を組み合わせれば、スマホで撮った写真でも、専用カメラで撮ったのと同じレベルの掲載写真に仕上がります。
展示場での撮影で最も失敗しにくいのは、曇りの日の午前8時〜10時の光です。拡散した光なら、強い影も塗装やクロームのテカリも出ません。朝が難しければ、日没前の1時間(ゴールデンアワー)がおすすめです。暖かく方向性のある光が、車のボディを美しく見せてくれます。正午〜午後2時は太陽が真上に来て、バンパーの下に後処理でも補正しにくい濃い影ができるので避けましょう。

Tamas Magda
Car Background AIの共同創業者(事業成長・提携担当)
Tamas Magdaは、Car Background AI(carbackground.ai、CarBG)の共同創業者です。CarBGは、販売店の在庫車の写真の背景を差し替える、車の写真向けの画像編集AIです。提携、事業成長、事業設計を統括し、開発チームとは製品ロードマップを、販売店とはオンライン掲載に本当に必要なことを一緒に考えています。APAC(アジア太平洋)とMENA(中東・北アフリカ)で新規事業の立ち上げに携わってきた経験を持ち、在庫車の見せ方や販売店の写真ワークフロー、車そのものを変えずに掲載画像にAIを活かす方法について執筆しています。
TamasはCar Background AIの共同創業者であり、同社に金銭的な利害関係があります。Car Background AIに触れる記事には、この立場が反映されています。